【完】金魚色の恋






「おまっ、何で泣くんだよ……」

「だ、だって、うれ、しくて……っ」

「ぁー……」

実來の涙を拭い、そっと額を合わせる。

「約束、忘れた?」

「ぇ……」

「泣いた後は?」

「……笑って、欲しい」

「そ。……笑えよ」

チュッと触れるだけのキスをする。

唇を離せば、実來は少し恥ずかしそうに、そんで……嬉しそうに笑った。


「でも……京ちゃんも約束忘れてた」

「は?」

「だって、あたしが泣かなかった理由……わかんなかったじゃん」

泣かなかった??

「……ぁ、昨日のこと?」

階段で落ちたとき、保健室でのことだよな??

実來は、コクンと頷いた。


「約束って……ぁ」

「ずっと我慢してたんだから……」

「ぁー……じゃあ、」

俺はそっと実來を抱き寄せる。


「……今までの分、ながせよ。ついでに、これからの分も」


俺がそう言えば、実來の瞳からは次々に涙が溢れ出す。