「家族、のこと?」
実來は首を横に振る。
「……ずっと、前のこと」
「……俺には、話せない?」
「あたし、からは……話せない」
「? 実來の心の問題じゃねぇの?」
「そう、なんだけど……圭くん、のキモチがあるっていうか……」
意味わかんねぇ……。
よくわからなそうな顔をしている俺に、実來は小さな声で言った。
「……圭くんのことを考えるのは、苦手」
「ぇ……」
「嫌な……記憶しか、でてこないから」
その時の実來の表情は、嘘なんかついているような顔じゃなかった。
悲しそうで、寂しそうで……
どこか、
申し訳なさそうな顔だった。