何故に礼拝堂に冷蔵庫だ? などと疑問に思っていたが、冷静に周りを見てみると、テレビやオーディオ、パソコンまで置いてある。
「違和感あるだろ? お前たちには悪いが、ロスタイムを乗り切る為の工夫だ。思っていたよりも精神的な負担が大きいからな、気を紛らすものは必要だ。特に出向組には若者が多いしな、俺の考えだ。みんなを悪く思わないでくれ。」
ロスタイム? 一体何の話だろうか? ジュンイやパステルからは聞かされていない言葉だ。やはり、普通では考えられないこの現象を、すぐに理解する事は難しいみたいだ。
「無駄ですよアリさん。 彼は本当に何も思い出していないのよ、そんな話しをしても、わかる訳ないわ。」
椅子に座ったまま、ずっと黙っていた妙が、静かに口を開いた。ゆっくりと俺を見ていたかと思うと、視線をアリに向けた。
「今回は諦めましょう。特に今回は賭けみたいなもんだったし、みんなそれほど期待していなかったでしょ? 」
投げやり的な言い方だったが、どこか寂しい感じで、みんな黙ってしまった。ただ、アリだけは手に持っていた大きな本を妙に手渡し、俺を見た。そして、
「仮にそうだとしても、諦めは許されない」