「あと二人揃えば幹部八人ね。さ、私達も帰りましょう。」
ユリスはテキパキと帰り始め。俺はと言うと、あたりを見回してから荷物を持ち、ユリスの後ろを付いていく。最近は誰かにつけられていないかを確認するのが癖になっていた。
「そう言えばさぁ、たいした話じゃないんだけど、ヒナって俺の名前なんだよな? フルネームはなんて言うんだ?」
長い階段を下りながら、ずっと気になっていた事をユリスに聞いた。本当はもっと早く聞きたかったが、周囲の変化が早すぎて、付いていくのが精一杯だったからな。自分の名前どころじゃなかった。
「そうだよ、あんたはヒナ。 フルネームは“ヒーナイズ・フェイテッド・アルム”。 伝統ある貴族、アルム家の当主にして、唯一のヒーナイザーを継承したのがあなたよ。」
貴族か、みんなからして日本人の名前じゃないから、俺もそうなのかと思っていたけど、少しショックだな。
「略してヒナか? わかりやすい名前だな。」
「それ考えたの、あんたじゃない。 センス無いよね。」