『戦い方』を知るにあたり、彼に私の身体能力を測られた。

どれだけのことが、どこまでやれるか。

基礎はどこからはじめるか。

定理はどこまで理解できているか。

昔私は様々な事をやった。

褒められたくて。
愛されたくて。

その中には、剣、弓、槍、馬なども交じっていたから、初心から始めなければならないことなどなかった。

だが、絶望的なものがひとつあった。

『持久力』の無さだ。

17年間表立つことを是とされなかった私は、『体力』面において酷く劣った位置にいた。

なにをしてもそれなりの成果が出るが、すぐに息が切れる。

それは致命的な弱点だった。

体力をつけようと必死で体を動かした。

重いものを持ち、走り、そうして長時間基礎的な鍛練を自主的にやった。

そして、倒れた。

貧血だった。

彼が言うには、何事も一気に行っては意味がない上、それに耐えうる栄養が私には足りていないらしい。

届けられる食事は確かに質素なもので、肉や魚はほとんどなかった。

私は死ぬことすらまともに遂行させてもらえないのか。

だるい体と頭でそう悲観していると、そんな私の胸の内を読み取ってくれたのだろう。

彼が、食料を街に買いに行く事など容易い。自分が用意しようと言ってきた。

…即座に断った。

この人にこれ以上迷惑はかけられないと思った。

彼はもう充分すぎるくらい色々なことを私にしてくれていた。

いつも傍にいてくれる。

話しかけてくれる。

鍛練を見てくれる。

食事の毒見をし、共に食べてくれる。

これ以上のことを望んだら、天罰がくだると本気で思った。

そして、これ以上手数をかけたら嫌われると思った。

それが…
怖かった。

どうしようもなく
怖かった。