何を言われているのかわからず、口を開こうとしている姫を遮るように続ける。



「私が傍にいます」



…落ち付かないからだ。

それだけだ。

自分に言い聞かせる。

深い意味などない。

誰かがそばにいてそれが孤独をやわらげるというなら今俺がいる。

誰でもいいなら、俺でもいいはずだ。

なんでもいいなら、任務でもいいはずだ。

…決して、傍にいたいというわけじゃない。

そうじゃない。

そんな感情は、気のせいだ。

そう、何度も自分に暗示をかける。

落ち付かない。

だからだ。


傍にいたい
…わけじゃない。


姫のためじゃない。
俺のためだ。

俺が落ち着くために傍にいる。

それだけだ。

それ以外に意味など


……ない。


「慣れてください」


繰り返しそう言ったあと俺はもう何も言わず視線も合わせなかった。

けれど、言葉に忠実に傍にいた。


傍にいる。

任務だから。


姫がそっと視線をそらし俯いたのに気付いた。

唇の色が引き、細い顎が微かに震えている。

その儚げな姿に、苦いものを覚えた。


…怖い、のだ。

……俺が。


ずきり、と、胸が軋む。