迷惑だ。

この言葉に、一縷の望みも持てなかった。

私の未来に、この人は絶対にいない。

それだけは、愚かな私にもわかった。

辛かった。

失恋もそうだけれど、先生の痛い部分を知らずに抉ったことが

辛かった。

涙がこぼれる事さえ自分勝手で卑怯な行為に思えた。

そして先生にもそう映る筈だった。

どうやってドアまで歩いたのか、私はもう覚えていない。

ただ、振り返った時涙が落ちたから、急いで、笑ってみせた。

せめてと、笑ってみせた。

先生は少しだけ息を飲んだけれど、やっぱり冷たく凍った目で私を見ていた。


「迷惑かけて」


そっと、呟く。


「ごめんなさい」


胸が、痛んでいた。

胃ではなく、心臓が軋んでいた。

心がばらばらになって、散らばっているのが見えるようだった。

私に優しかった人に私は迷惑をかけた。

その事実が、私に人間失格の烙印を押していた。