「稚春!!」
追いかけてくる棗の手を振りほどく。
嫌だ、と叫んでくる連の声に唇を噛み締める。
だけれどそのまま、走る足は止めずにあらかじめ呼んでおいたタクシーに乗り込んで。
「運転手さん、取り敢えず追ってくるバイクや車を撒きながら《藤山》の所まで行ってください。」
早口で運転手さんに注文して涙を拭った。
運転手さんは「藤山!?」素っ頓狂な声をあげたけどそれをスルーして「すいません、今とても急いでるんです。」とだけ言ってポケットから無造作にケータイを取り出す。
そして電話帳のハ行に素早くカーソルを動かし、ある場所で通話ボタンをプッシュした。
呼び出し音が聞こえる中、二度、深く呼吸する。
と。
『――――はい。』
三コール目で出たその人に服の裾を軽くきゅっと掴んだ。
「お久しぶりです。突然、申し訳ありません。少し、お願いごとがあるのですが―――」
この日を境に、白兎稚春は姿を消した。
赤い狼 四~end~

