「おいおい、隼人さんよ。俺は仲間内の喧嘩だけは嫌いなのよ。それは隼人がよく分かってんだろ?」
整った銀の顔がにやり、と何か意味深な笑みを浮かべる。それと同時にぐにゃり、淡い青の瞳が歪む。
その表情に背筋に冷たいものが走った。
肌が栗立つ。
「だからよ、喧嘩はしたくねぇわけよ。でも俺は隼人がそんなんだったらイラつくわけね。」
へらへら。いつもの調子で話す銀が今は逆に怖い。
「大丈夫だ。」
だけど微かに震えた私の耳元でそう言ってくれる人が居るから安心する。
大丈夫なんだ、って思える。
連のおかげでやっと安心の息をついた瞬間だった。
「歯ぁ食いしばれよ、隼人。」
銀が握りしめた拳を思いきり高く上げた。
それが視界に入った瞬間、「ダメ!!!」掠れて出ないはずの喉で精一杯叫ぶ。
その間、隼人は何もしない。
身構えるわけでもなく、驚くわけでもなく、ただその拳を受け入れる瞬間だけを待つように茫然と銀を見つめていた。
と、
――プルルルルル――
今の雰囲気とは全く場違いな音が辺りに広まった。
「チッ、」
銀がその音に反応して拳を降ろす。その様子に良かった、と心の中で呟きながらポケットからケータイを取り出した。
鳴っているのは、私のケータイだ。
「もしもし。」
非通知でかかってきているにも関わらず、通話ボタンを押して出る。相手は誰だか、もう分かっていた。
『―――あ、妃菜だけど。』
そう、妃菜ちゃんだ。

