私の名前を呼ばないで"妃菜"って呼んでたことが分からないなんて無意識に呼んでたとしかないじゃない。
無意識、じゃなかったら良かったのに。
意図的だったらまだ、ムカつくけれど許せた。だけど、無意識だなんて。
分かっていたけど、
理解してるフリしてたけど、
やっぱり。
「ズルいじゃない。」
怒ることもできないし、責めることも、できない。
そんなの卑怯すぎる。
「稚春、教えてくれ。いつから俺は稚春のこと"妃菜"って呼んでた?何をすれば……償える?」
「やっ、」
「悪かった!!稚春を傷付けたこと、お前がいつか許す日が来ても謝る!」
「やめてっ、」
「いつから俺は稚春を苦しめてたんだ!?」
「もう何も言わないで!!!」
隼人のセリフを遮るようにして途切れていた言葉を紡ぐ。
「言ったって分かんないよ、隼人には。」
「稚春…。」
弱々しく吐かれた隼人の声に泣きそうになって目を強く瞑ってぐっと堪える。
運命の人との糸。
隼人が
『俺と結ばれてんだろ。』
そう言ってくれた糸。
でもそれはきっと、それは"妃菜ちゃん"と繋がってるんだよ。私はそう思うよ。
だって"妃菜ちゃん"は隼人が好きで。
隼人も"妃菜ちゃん"が好き。
違うと言われても納得しない。納得できない。
だって、どんな時も。
肝心な時はいつも。
――――私が名前を呼んでほしい時はいつも。
『妃菜。』
そう、呼んでいたでしょう?
寂しくなって、連の服を掴む。
すると、ぎゅう。
「傍に居る。傍に居るから。ずっと。」
連が強い力で私の体を抱きしめてきた。強い力で肩を抱いてくるそれに、興奮していた心が少し落ち着いた気がして、こくんと頷く。

