嘘を嘘で隠す。
嘘を、重ねていく。
真っ白な画用紙に、黒の水彩絵の具を何度も何度も塗りつぶしていくように。
何度も、何度も。
嘘をつく。
やがて、それは重なりに重なって。
真っ白な画用紙は最初の姿なんてなく、真っ黒に変わっているだろう。
そうなればもう、綺麗な白の画用紙を鮮明に思い出すことはできない。
そう。そうなれば。
――――――私の"ホントウ"も。分からなくなる。
「おい、今の何だよ!!」
びくり、大きく叫ばれたそれに体がビクつく。
その叫びは私の思考を止めると同時に、私の心の奥底に眠っていたものを呼び起こした。
嗚呼、視界が霞む。
「……やめて。」
「今の、"妃菜"って何だよ!?」
「お願いやめて!!!」
がしゃん!!
マグカップが床に落ちる。
両手で奏の声が聞こえないように耳を塞ぐ。
やめて。言わないで。それ以上、言わないで。お願いだから。
「お前は"妃菜"じゃねぇだろうが!」
「やめてよ!!」
私の一番言いたかったことを言わないで。
胸の奥に秘めていたことを言わないでよ。
どんな想いでそれを唇を噛み締めて我慢したと思ってるの。
どれだけ必死に笑顔を作ったと思ってるの。
どれだけ、
「もうやめてよ!!」
苦しみながら努力したと思ってるのよ。

