赤い狼 四







嘘を嘘で隠す。



嘘を、重ねていく。






真っ白な画用紙に、黒の水彩絵の具を何度も何度も塗りつぶしていくように。




何度も、何度も。



嘘をつく。






やがて、それは重なりに重なって。



真っ白な画用紙は最初の姿なんてなく、真っ黒に変わっているだろう。





そうなればもう、綺麗な白の画用紙を鮮明に思い出すことはできない。





そう。そうなれば。







――――――私の"ホントウ"も。分からなくなる。









「おい、今の何だよ!!」





びくり、大きく叫ばれたそれに体がビクつく。



その叫びは私の思考を止めると同時に、私の心の奥底に眠っていたものを呼び起こした。




嗚呼、視界が霞む。






「……やめて。」



「今の、"妃菜"って何だよ!?」



「お願いやめて!!!」






がしゃん!!



マグカップが床に落ちる。


両手で奏の声が聞こえないように耳を塞ぐ。




やめて。言わないで。それ以上、言わないで。お願いだから。





「お前は"妃菜"じゃねぇだろうが!」




「やめてよ!!」







私の一番言いたかったことを言わないで。


胸の奥に秘めていたことを言わないでよ。


どんな想いでそれを唇を噛み締めて我慢したと思ってるの。


どれだけ必死に笑顔を作ったと思ってるの。




どれだけ、





「もうやめてよ!!」






苦しみながら努力したと思ってるのよ。