騒がしかった周りはいつの間にか静かな空間へと変わっていて、乾いた笑いが出そうになる。
そんな中、不良さんたちがヒソヒソと話す声が聞こえてくる。
ある者は動揺、ある者は状況確認、ある者は私への同情。色んな思いが交差する。
それを確認して、震える手をマグカップを持っていない手で押さえた。いくらか小さくなったその震え。
と。
「――――――なに、今の。」
動揺を隠しきれない声が部屋に落ちた。
声がした方に視線だけを送る。
「なに、今の。」
声の主は奏で。
揺れる奏の瞳に、目を逸らしたくなった。でも、それでも、逸らすことはしない。負けないって決めたから。
「今の、って……なんのこと?」
にへら。誤魔化すように笑う。
正直、もう笑う気力なんてなかった。顔の神経が引き攣っていた。
限界だ、と心が私に伝えていた。
それでも私は嘘をついて、事実を揉み消す。そうでもしないと私が壊れる。限界だ、これ以上は壊れる、と私の心が訴えているとしても私の居場所がなくなるのは嫌だ。
居場所がなくなったら私、壊れる。きっと、また《SINE》に出逢う前に戻ってしまう。そうなったらきっと、今の私は死んでしまう。
これ以上ムリするのは心が先に壊れちゃいそうで、だけどムリしなくちゃ自分の居場所がなくなって今の私が消えてなくなっちゃいそうで。
何が正しいとか、何が間違ってるとか知らない。
私は、自分が守りたいものを守るために選んだ道を進む。だから、
「何もなかった。ねぇ、――――――そうでしょ?」
"稚春は妃菜"だという嘘に嘘を被せる。

