どこからか聞こえてきた声に誰にでもなく、疑問符を投げかける。すると、ふわり。
「あ、棗。」
マリン系の爽やかな匂いが鼻を掠めた。棗の、匂いだ。
「お寿司を守るってどういうこと?」
「周りを見たら分かるよ。」
棗の柔らかな笑みが私に向けられる。その笑顔を見てさっきのニヒルな悪魔を想像する人はゼロに等しいなと確信した。こいつもまた、奏と同じ二重人格に違いない。
棗に白い目を向けてから周りを見渡してみる。それによって妙だな、と首を捻らせる。なんで皆固まってんの?
もう一度近くに居た不良さんたちを見る。その中に緑のソフトモヒカンの雷太の姿が見えて雷太までなんで固まってんの!?と声をあげたくなった。
だがしかし、ここは我慢だ。今は叫んじゃいけない気がする。込み上げてくる衝動をなんとか抑え込んだ。
と、
「奏さん、心配しなくても誰も食べないっスよ。」
顔色をいつもより青くさせた雷太が口を震わせながら小さく、そう呟いた。
「声が小せぇ。」
「すんません…。」
「声が小せぇ!!」
「すんません!!!」
「もっとデケェ声出せねぇのか!!」
おい、何の指導だ?

