赤い狼 四






「やっぱコーヒーだな。」



「いや、カプチーノだね。」



「コーヒー!!」



「カプチーノ!!!」





断言しよう。


ここは私の家ではなく、カフェだ。




さっきからこの言い合いが私の家からずっと続いている。本当にどうしたものか。




お店に着いてカウンターの私の両隣に座った二人はメニューを見ることもなくカプチーノとコーヒーを頼んで頼んだ飲み物が運ばれてくるまでずっと言い合いをしていた。



さすがに飲み物が来れば大人しくなると思いきや、全く静かにならない。




しかも、飲んでやっぱり自分の好きな飲み物が一番美味しいと感じたのか言い合いはヒートアップしていた。




………これは、困る。





「ね、ねぇ。もうカプチーノとコーヒーがどれだけ美味しいか分かったからさ、ケーキでも食べて楽しもうよ。ね?」




私が奢るからさ、そう付け加えて優吾と慶吾を見る。



でも二人は「いや待て。まだ決着がついてねぇ。」「待って。まだ勝負は終わってない。」だいたい同じことを言って睨み合いを止めない。



まぁ、意地が強いこと。




私はそれに軽く感心を覚えた。ここまで頑固に自分の意見を通そうとする人なんて世の中に居るんだね。私も少しは見習わなきゃ。