赤い狼 四






ごめんね、慶吾。そう言おうと口を開く。


でも私の口からその言葉は出てこなかった。正確には、出せる時間がなかった。





「行こう。」



「行ってみたい。」





そう同時に二つの声が聞こえて。




「へっ?」




一瞬何を言われたのか分からなかった。





「何飲む?」



「やっぱ俺はカプチーノかな。」



「はぁ?そこはコーヒーだろ。」



「バカ。そんなんいつでも飲めるじゃん。自分で作れないやつ飲むだろ、普通。」



「店のと自分で作るのとは味違うからコーヒーなんだよ!」



「少しはコーヒー以外も飲めば?」



「お前も同じもんだろーが。いっつもカプチーノカプチーノ。カプチーノ以外も飲め!」



「カプチーノ以外も飲んでるよ。カフェラテとかミルクティーとか。」



「何でお前がそーいうの言うとオシャレに聞こえるんだ!」



「格の違いじゃない?」





戸惑う私をよそに出かける準備をしながら二人が口喧嘩を繰り広げる。



えーと、二人ともさっきまでの沈黙は一体どこに…。




どうすればいい?


おろおろと手を出したり引っ込めたりしているとオレンジの二人が同じタイミングでこっちに振り向いた。




「「行くよ!!!」」




「………はい。」





ズイッ、と顔を近付けてきた二人のあまりの勢いに圧倒されて静かに頷くしかなかった。