赤い狼 四






ふふん、と勝ち誇った顔を奏に向ける。



奏は「馬鹿だ。」と一言呟いて私から視線を逸らした。


誰が馬鹿だって、おい。



文句を言ってやりたいところをぐっと抑えて自分の中でとどめる。


私は大人だからね。さっき奏のこと相手しないって決めたからね。だから、私は文句言わないもーん。





「……想ぞ…間違えた。妄想してるところわりぃが、話が進まねぇから勝手に話すぞ。」




自分を褒め称えてあげたい衝動に駆られていた丁度その時、今まで私の腕を掴んで黙っていた隼人が口を開いた。



塚、今さっき想像って言おうとして妄想に変えたでしょ。しかもちゃんと間違えたって言ったでしょ。ってか妄想も想像もしてないし。違うんだけど。




「妄想じゃないし。」



「嘘つけ。お前の意識がこっちにねぇ時は妄想してる時だろーが。」




……どうやら私が考え事や何かを思っている時は妄想していることになるらしい。



塚、妄想って。なんか変態っぽいんですけど。




無言で隼人の言葉に心の中で抗議していると隼人が大きなため息をついて「また妄想か?」と聞いてきた。



隼人さん。一回、妄想から離れてください。