赤い狼 四






それに、今気付いたけれど隼人に最後に逢ったのはとても嫌な気持ちでお別れをしたんだった。




"ズルい人"



確かに、私はそう言ってその日は帰ったんだ。



すっかり忘れてた、と自分の記憶力に呆れる。



それと同時に、思い出したとたんに心がギュウと絞められたように苦しくなった自分勝手さにも呆れて小さく息をついた。




今更だけど、あんな事を言っておいて本当に自分勝手だなと思う。






嫌われたくない、って思う自分が。






脳裏に浮かんできたそんな言葉にフッと自虐的な笑みを溢して視線を上げる。



と、




「…っ、」




重なった視線にビクリと肩が震えた。




「捨てられたと思ったじゃねぇか。マジで焦った…。」




てっきり、いつもの怒鳴りが降ってくるか、それともまた妃菜ちゃんの代わりをしなくちゃいけない方向になるのかと思っていたけど、そうではなかったみたいで。




ふわりと頭に乗せられた大きな手に大きく目を開ける。