「おい、棗。俺のを口説くの止めろ。」
「えー、口説くくらい許せよ。俺悲しいー。」
「んだよ。そのキモい喋り方は。」
「キモいとか言っちゃヤダー。ね?稚春。」
棗が私の体をブンブンと横に揺らしながら顔を覗き込んでくる。
その行為に戸惑っていると、隼人の手がこっちに伸びてきて―――
「取り敢えず俺の女から離れろ。」
そのままグイッと隼人の胸へと引っ張られた。
おかげで隼人の胸へと私の顔が押し付けられて「ングッ」と、なんともまぁ色気の欠片もない声が出る。
「俺の女だって。それ言われたら何も出来ないじゃん。」
「だから言ったんだろうが。」
……え。え。今隼人なんて言った?おおお、俺の女!?まさかそんな事言ってないよね!?
突然の言葉に心臓がバクバクいっている。
仮の彼女だとしても、妃菜ちゃんの代わりだとしても、その言葉は嘘でも嬉しい。
あ…ヤバ。泣きそう。
うるうると潤んできた目を瞬きさせる。
隼人があんな事言うから。
「…~~っ。」
「あ?稚春、お前泣いてんのか?」
「な、泣いてない。」
「じゃあこっち向け。」
「泣いてないもん!」
「いや、泣いてんじゃねぇか。」

