「………稚春が苦しんでるって何だよ。」
息を落ち着かせた隼人が背もたれに頭を乗せながら呟く。
その、誰に言ったわけでもない言葉を頭の中で繰り返しながら隼人の閉じられている目を見つめる。
瞼の裏には一体、何を写し出してるんだろう。
「…隼人、本当に稚春が何に苦しんでんのか分かんないんだったらお前は稚春の彼氏失格だ。」
「あ?」
少しの間、閉ざしていた口を再び開けた俺に隼人が目を閉じたまま「……喧嘩打ってんのか。」言う。
でもその言葉には明らかに元気が足りなくて、覇気がない。
さっきの俺の言葉に少しはダメージを受けたみたいだ。
「稚春が優しいからって甘えていつまでたってもウジウジ悩んでたらさすがの稚春でも我慢の限界がくるぞ。
それに、」
目を開けて何かを言おうとした隼人より先に声を出す。
その瞬間、顔を起こしてムッとした表情をした隼人だったけど一応は聞いてくれるらしい。
隼人が口を再び閉ざしてソファーに深く座る。
それを目で追いながら右の口角を上げて隼人にだけ、聞こえるような声量で呟いた。