「稚春の気持ち?考えたことあるか、って聞くなんて馬鹿にしてんのか。」
「考えたことがあんなら何でそんな事ができんだよ!」
「そんな事ってなんだよ。俺が優柔不断な事ばっかりしてるとでも言いてぇのか!!」
「その通りじゃねぇか!!」
「こっちはケジメつけようとして、妃菜探ししてんだろーが!」
「稚春が悲しんでんの、知らねぇからそんな事が言えんだよ!」
近くにあったソファーを蹴りあげる。
肩で息をしながら隼人に視線を向けると、隼人も肩で息を切らしていた。
あぁ、酸素が足りねぇ。
入るべきではない管に入りそうになった唾を察知した喉が反応を示す。
ごほごほと咳をしてやると、心なしか楽になった。
「―――お前は自分の都合しか考えてない。ケジメをつけたいんだったら稚春にもこの件の事を言ってやるべきだろ。」
喉を片手で押さえながら枯れた声を出す。
さっきの咳でやられちまったらしい。意外とひ弱いな。
鼻で笑って隼人を横目で見る。
隼人は落ち着いた息をゆっくりと吸っては吐き、吸っては吐きを繰り返している。
スーハースーハー。
空気が勢いよく吸われる音の後にすぐ、吐き出される音が聞こえてくる。

