隼人より少し高い俺の声が部屋に響く。
その部屋に響いた声を受け取った隼人が「そうかもしれねぇけど、」言葉を詰まらす。
隼人らしくない。
今日、初めて瞳の色に戸惑いが見えた。
ポーカーフェイスという名の仮面が剥がれる。
「……そうかもしれねぇ。だけど稚春が他の男と話してるとイラつくんだよ。
今でも《VENUS》で稚春が何してんのか気になってっし、本当は無理やりこっちに連れ戻してぇんだよ。」
綻びを引っ張っるかのように次々と弱さを見せる隼人。
でも、その想いはワガママで稚春を苦しめる事にしかならない。
それを隼人は、分かってんだろうか。
相手がそれで傷付くという事を。
「なぁ、お前って稚春の気持ちを考えた事あんのか?」
拳をキツく握りしめる。
壁が怒気を含んだ俺の声を吸い込む。
「は?」
「お前は稚春の気持ちを一瞬でも考えた事があんのかって聞いてんだよ。」
疑問符を投げてくる隼人に睨みを効かす。
あぁ。俺、自分で思ってたより怒ってるみたいだ。

