「じゃあ質問させてもらうけど。」
隼人の息遣いが静かになる。
すうっと俺の口に空気が入っていく音が聞こえた。
「妃菜と稚春、どっちが好きなんだ?」
自分のもやもやを吐き出す。
それはずっと思っていたことだ。はぐらかされは、しない。
「どっちが、って何だよ。」
鼻で笑いながらソファーに座り直す隼人。
その顔には焦りや戸惑いは見られないけど―――心の中では相当焦っているだろう。
ポーカーフェイスがとてつもなく上手い隼人だ。
きっと今もポーカーフェイスで本当の顔を隠しているに違いない。
「二日連続《VENUS》に行ってる稚春にイラついて、妃菜の手紙は大事に持ってるんだ。どっちが好きなのかなんて気になるのは当然だろ?」
余裕な笑みを崩さない隼人に余裕の笑みを向ける。
「知って何になる。」
「忘れたのか?俺は稚春を好いてるぞ。」
「フッ、じゃあ尚更教えるわけにはいかねぇじゃねぇか。お前にわざわざ不利な情報を流すほど俺も馬鹿じゃねぇ。」
「不利、ねぇ。」

