「…何でもない。それより今度、皆で会いに行こうか。」
極力明るい声を出して隼人の真っ赤な髪の毛を見る。
話をしている間にほとんど乾いてしまったらしい原色の赤はいつものワックスの力が注がれていないからか、心なしか元気が足りない気がする。
特に頭部と横側の髪が垂れているような気が。
と、そんな事を思っている俺の耳に「あ?」予想通りの反応が返ってきた。
今まで伏せられていた顔が上げられて思わず口元が緩む。
「誰に会うんだよ。」
「いつがいいかな?妃菜探しが落ち着いて皆が揃う時の方がいいよな。」
「おい、誰だって言って「よし、2月20日にしようか。」」
ことん。
いつの間にか俺の体温でぬるくなっていた缶を机に置く。
「お…前……。」
隼人が言葉を詰まらせた後に、唾を呑み込んだ。
一気に静かになったこの空間に息を一つ落とす。
「稚春も連れていこうか。」
にっこりとした表情とその言葉が気に食わなかったらしい。
隼人の握っていた缶が鈍い音を立てて潰れた。

