俺がここまで言っても考えを変える事はできないらしい。
まぁ、それもそうか。だって誠也はお前の弟だったもんな。
大事に、してたもんな。
隼人の事を凄く慕っていた誠也と厳しい態度をしながらも誠也を優しい目で見る隼人が瞼の裏に浮かぶ。
あの時はそれが当たり前の光景で。それが二度と見れなくなるなんて思ってなかった。
誰も、思ってなかった。
「"悪い"なんて言ってない。ただ、何でもかんでも自分一人で抱えるなって事だよ。」
暗い気持ちを掻き消して顔を上げる。
俺があの時に引き込まれたら隼人を助けてやれなくなるだろうが。しっかりしろ、俺。
気を取り直す自分に思わず笑いを溢す。
―――自分も結局は過去に囚われてるじゃないか。
「…情けない。」
「あ?」
小さく呟いたはずの言葉に隼人が眉を歪ませる。
隼人も俺と同じで俺のどんな小さな声でも聞こえるらしい。
何でも聞き取れるこの関係は、時に厄介だ。

