赤い狼 四






「きっと、俺が先を知ってたとしても止められなかったと思う。だって隼人と誠也、どっちかを取る形になるから。」




もう過去となっている出来事が頭の中で映し出される。



俺が一番、思い出したくない光景だ。




仲間が死ぬ。そんなの、もう二度と味わいたくない。




「隼人か、誠也、どっちかなんて選べるわけがないだろ?どっちも俺の大切な仲間だ。


それに、もしあの時誠也が隼人を庇ってなかったとしても誰かが助けに行ってた。


そしたら、その助けた"誰か"が死んでたかもしれない。だから隼人のせいじゃない。」



「違ぇ。」



「違うくないだろ?仮に誰もお前を助けなかったとしたらお前が死んでた。あのスピードで轢かれてたら助かるのはまず無理だ。」



「そもそも俺が妃菜に着いていかなきゃ良かった。」



「あの時の隼人は妃菜が好きだったんだから着いていったのは当たり前だ。


何度も言うが、隼人は悪くない。自分をそう苦しめるなよ。」





あまりにも手に力を込めすぎたせいでビールの缶がペキペキと音を立てる。




隼人は俯いたまま「俺のせいだ。なのに、俺のせいにして何が悪い。」強い口調でそう言った。