「怒ってるに決まってる。」
口に含ませた冷たい液体が喉に通ったのを確認してもう一度、呟く。
それは台詞のわりには怒気が込もってない。
何故だろう。
「…何に怒ってんのか、とか聞いたら腹立つか?」
「分かってて聞いてるならな。」
ソファーに片足を立て、その上にビールを持った腕を乗せて俯く隼人を鋭く見る。
そのまま隼人の斜め前のソファーに腰を降ろしてまたビールを口に含んだ。
しゅわしゅわ。
口の中で液体が泡を立てる。
「――自分でも分かんないけど。そろそろ見てみぬフリは出来ないんだなって気付かされたのは分かる、かな。」
「………。」
喋りはじめた俺を見ずに相変わらず俯いて黙りを通す隼人。
それでも口を閉じる事はせずにまた喋るために空気を吸う。
「誠也の事はしょうがない。最初はしょうがない、で済んでたまるかって思ってたけどあれは誠也が望んでなった事だ。
誰にも、あの時の誠也は止められなかった。」
皆、あの状況に付いていくのに精一杯だったんだ。
裏切り。制裁。総長のオーラ。一気に芽生えた憎しみ。
全てが、初めて経験したものだったから。

