「隼人…。お前、総長としても男としても最低な事してるぞ。」
隼人のしている事は間違ってる。
ぴくりと隼人の体が揺れる。
自分でも気付いていたんだろう。眉を歪ませながら「……知ってる。」苦い顔をしたままソファーに座りこんだ。
頬や体についた返り血はもう消えている。
でも隼人のその真っ赤な髪が濡れて肌に引っ付いている様を見ると、まだ血がついてるんじゃないかという気分に陥る。
隼人の髪は、原色の赤すぎる。
と。
「なぁ棗、怒ってるか?」
冷蔵庫からいつの間にか取ってきたビールを開けながら隼人が微かな声で呟くように言った。
ビールの蓋が開く音と重なっていたけど俺には聞こえた。隼人と長年一緒に居た俺だから、聞こえた。
「そんな事お前が聞いて何になる?」
「…別に。怒ってんのかそうじゃねぇのか気になっただけだ。」
「怒ってるよ、相当。」
「……あぁ。」
俺もビールを冷蔵庫から出して蓋を開ける。
重く静かなこの空間に響くビールの蓋が開く音がどこか陽気で場違いだな、と微かに口元を緩ませた。

