くしゃり、紙が潰れる音がした。
それは俺が掌に指を食い込ませたからで。
「痛い、な。」
少しの間を開けて自分の中指と人差し指の爪が掌に刺さった感覚が脳に伝わる。
どうやら考え事をしていて脳が上手く働いてないらしい。
感覚神経が鈍ってる。
チクタクチクタク。
秒針の音が、耳に入る。
そっと目を閉じた。
脳裏につい最近のここの風景を映し出す。
『…なぁ、なんて書いてあったんだ?』
『教えて何になるっつーんだ。』
『俺らが妃菜探しを手伝ってるんだからその手紙の内容を見る権利はあると思うが?』
『これは俺宛にあの女が書いたもんだろ。』
『もうそういう問題じゃないだろ。』
『…チッ、』
『おい…!!』
チリチリと焦げていく黒の手紙。
ライターの炎で燃やされた"それ"は机の中央に置いてあった黒の灰皿に灰となって破棄された。
なのに。ないはずの、あってはならない"それ"がまだこの世にあるという事は。
――――――あの日、燃やしたと思っていたものは何も書かれていない中身と黒い封筒だったという事か。

