赤い狼 四






「稚春!箸を持て!!」



「祭りだ祭りだぁあ!!!祭りがヒートアップしたら戦争だぁああ!」



「………。」





どうやったらそういう考えになるのか。全くもって分からないけれどとにかくは





「もっと肉を持ってこいいぃ!」





箸を持って戦争のスタンバイをしていた方がいいらしい。




フシューフシュー、と聴こえてきそうなほど鼻息を荒くさせている陽の横顔をチラ見する。




う、牛だ。牛がここに居る。戦闘モードの牛がここに居る。お肉へと突進しようとしている。



これは赤い布が必要だ!!!




確かこの辺にあるはず…!





ガサゴソ、ガサゴソ。




いつ戦争が起こってもいいように箸は左手に持ち変えて右手で鞄の中身を探る。




あ!あった!




見付けた"それ"を手に掴んでばさりと広げる。うん、いい感じのものが鞄にあって良かった。




「さぁ陽!!こっちに来るのよ!」





机から少し離れて仁王立ちで赤い布を両手で端と端を持ち、自信満々に広げる。



バサバサとその、原色の絵の具を直接塗ったような真っ赤な布を激しく揺らす。





「さぁ来なさい!!」