赤い狼 四






唇を尖らせて近付いてくる朋さんを片手で制して一番安全な優悪と陽の後ろに隠れる。




「稚春、それはない。それはねぇぞ。優悪と鳳陽を使うなんてご法度だぞ。俺が近寄れねぇこと分かってやってるのか、それは。


って、二人とも頼むから睨むな。悪かった。稚春に手を出そうとして悪かった!だから早く二階に上がれ!!」




どうやら朋さんは優悪と陽が苦手らしい。




終始無言な二人に朋さんは顔に汗をかきながらペラペラと一人で喋って、厨房へと姿を素早く消した。




「………何だったんだろう。」



「さぁ…。まぁ稚春、行こうか。」




首を傾げていると優悪に背中を押されて、お店の二階へと無理やり誘導される。




一段登る度にタン、と少し高めの段のピンク色な階段が音を立て私の耳に入ってくる。



その音に耳を澄ませながら登りきると、拓磨が「好きな席に座れよ。」と珍しく私に優しく接してくれた。




その言葉に素直に従って優悪と陽を両隣に無理やり座らせた後に、その間に座る。




そんな私の行動を見て、優悪と陽以外の皆は顔を顰めたけれど、私はここを断固として退く気はない。



自分の身の安全を確保する方が先だ。