「ねぇ、稚春。」




だから何よ。と言ってやりたい。早く喋ってよ。



なかなか喋りださない連にイライラしてきた頃、連がさっきよりももっと私を抱きしめる力を強めた。







「俺は、稚春が大事。」







急に何を言ってるんだ。と思った。でも、何で今このタイミングで言ったのかって考えたら一つしかない。




たぶん連は私が弱ってるのが分かったんだろう。



だから多分、




「俺は稚春が大事。」



「うん。」



「俺は稚春が、大事だ。」




こんなに何回も恥ずかしい台詞を言ってくれるんだ。




本当に連は、優しい。




思わずぎゅうっと連の腕を両手で掴む。


うんうん、と頷きながら。




「稚春。」



「うん。」



「俺はずっと離れねぇ。」







最後の言葉には返事が出来なかった。


それは、泣いてしまったから。



連。私この時ね、私にも存在理由があるのかなって。私を大事って言ってくれる人が居るんだって。

連が居てくれて良かったって。



そう、思ったんだ。





連には笑ってありがとうしか言えなかったけど。

救われたんだよ。




―――この時、不覚にもドキッとしたのは私だけの秘密。