赤い狼 四






心の中でそんな事を言っても誰にも伝わらないのにブツブツと何回も早く早く、と呟く。



まるで飼い主を待っている犬だ。




自分が首輪を付けられて稚春に飼われている風景を想像する。





『ほら、おいで!奏くん!』



『わんっ!』



『お~、ぃぃ子ぃぃ子。って、犬だから"子"じゃないか。ぃぃ犬ぃぃ犬か!』



『わんっ!』



『そうか~。やっぱり奏くんもぃぃ犬の方がぃぃのか~。今度からぃぃ犬って呼ぼう!』







……………駄目だ。絶対稚春が飼い主になったら飼い犬まで馬鹿になってしまう。



つーか俺が犬だったとして飼い主が稚春だったら死んだ方がマシだ。



馬鹿菌に侵される前に死ぬか逃げる。よし、逃亡が一番ぃぃ。



俺が犬になって稚春に飼われそうになったら助けを求められるように犬の友達を作っておこう。



自分の危険は自分が守る。



うんよし、そうしよう。





勝手に想像を膨らませながら稚春から逃れる方法をあみ出した俺は得意気に頷く。




そして、そんな事をしている間に…





「ただいま戻りましたぁ!」



「たっだいま~♪」





何故か無駄にテンションが高い連と稚春がドアを勢いよく開けて入ってきた。