「林野、今日公園に寄ってくれない?」
『またですか?今日は旦那様が帰ってきますよ?』
「えぇ。お父さんが帰る頃には帰るわ。今日は公園に行きたいの。」

私は中学の頃に、助けてくれた男の子が忘れられない。

私が転んで泣いてた時に、上着をかけてくれて優しくしてくれた。

顔はあんまり覚えてないんだけどね…。

『どうぞ。歩いてお帰りになりますか?』
「そうする。帰ってていいわ。」

この公園で助けてもらった。
すごく優しい人。

って大変!
もう7時じゃない!

「帰ったわよ!お父さんは?!」
『すでにリビングにおります。』
「そう…。着替えてくる。お父さんに伝えておいて。」
『かしこまりました。』

部屋に入ると微量の香水の匂い。
私の好きなベリーの香水だ。
林野がしてくれたのか。

「お父さん、ごめんね、待たせちゃって。」
『友香、良かったよ。何かあったのかと思った。さぁ食べよう。』
「うん。」

私にはお母さんがいない。
私がまだ小学生の時に病気で亡くなった。

だから私は母親の温もりをあまり知らない。
だけど、執事達の優しさやお父さんの気遣いも、温もりだから。

寂しくはない。

『では、わたくしは今日は失礼します。あの、お嬢様ちょっと。』
「??なぁに?」
『まりんの事支えてくれ。』
「そんなの当たり前よ。あ、そうだわ。林野、私の事は友香でいいわ。お父さんの前でだけよろしく。」
『了解しました。』
「敬語も無しよ。」
『はいはい。』

なによぉ、あの態度!!

「じゃあね!」
『またな。』
「なにかあったのか?」
『ううん?何でもないの。』

お父さんにはばれないようにしなくちゃね。

なぜかお父さんは身分を大事にする人なのよね…。