こういう時に限って電話に出ないなんて
由香里は雑誌の撮影があるって言ってたし……
「いっ!」
ガンガンと頭の中が頭痛に襲われはじめてきた
家まであと五〇〇メートル以上ある
私は立っていられず
思わず道端に寄り、その場に座り込んでしまった
「こまったな……」
――少し休んだら治るかな
嬉しい事に道を歩いている人間は誰一人いない
私がこの場に座っていても変な目で見られることはないだろう
その時、一台の車のヘッドライトが薄暗くなった道を明るく照らし出した
私はそんなこと気にならずに
壁に寄り一人うずくまっている
その車は私を通り過ぎたと見せかけて
何故かハザードをつけた状態で道端に止まった
――ううう…、めっちゃしんどい……
俯いたまま頭痛の痛みと悪寒に耐える
絶望感の淵に立たされたような感覚の私の目の前に現れた一つの人影
そのままゆっくり見上げると
街頭の光で影になり目の前に立つ相手の姿が暗くて見えない
「……?」
激痛で歪む顔のまま
睨むように目を凝らしてみると……
「そんなにガンつけないで下さいよ」
