自分自身が結局何がしたいのか
冷静になって初めてわからなくなってきた



襖を一枚隔てた向こうからは、楽しそうな笑い声





「……」


呆然としながらもその会話は嫌でも耳に入ってくる



教授と櫻子が互いの身の上話に華を咲かせているらしい



その度に胸がギュっと強く締め付けられて

苦しくなって、悲しくなって、切なくなって、泣きたくなって……




こんな気持ちをするために私はここにいるんじゃないのに


ただ、教授が見合いに対して消極的だったらいいなって勝手に思い込んで

それを確かめにここまでやってきた





でも実際は真逆で

教授は見合いに対して積極的でとても楽しんでる





それが……現実なんだ









「すみません、ちょっとトイレに」


教授はそう言って立ち上がると、個室から出た



ハァ…と疲れた様子でため息ついて、指で軽くネクタイを緩める



その時トイレに繋がる通路でお客様っ!と店員の掛け声が聞こえてきた



「どうかしたんですか?」

「あ水無月様!妹さんが……」

「妹?」