「櫻子さんは書道一段なんですの?素敵やわ~」


神流の品のある笑いに向かい側に座る櫻子が照れながら、とんでもないと返した


「えぇやないの。文字はその人物の性格が出る言うから、櫻子さんの清楚な性格にぴったりやわ。な?愁さん?」


「そうですね。お手紙の筆跡もお綺麗でした」



神流の問い掛けに教授は

笑いながら櫻子を見つめた







「……いつもの教授じゃないみたいだ」


見合いの個室を仕切る襖と襖の間にほんの僅かにできた隙間



そこからひっそりと覗き込むのは

心臓バクバクさせながら教授の見合いの一部始終を観察する私の姿



ちょうど互いに対面してる角度から様子が窺えて


手前には教授と見合い相手が見える絶好の場所だ




「相手の人、可愛い……」


ボソリと呟いて教授から櫻子に視線を移す



春らしいピンク色の着物を着て、髪をヘアーアクセサリーを使ってまとめてアップにしている


横顔から見てもその美貌は想像以上の美しさだ




教授……、楽しそう




櫻子との会話も弾んでいるのか
度々笑みがこぼれる様子が目に入ってくる