そんな俺をよそに灯は話し出す。
俺の目を真っ直ぐ見ずに…
「あたしが那智のこと好きって…嘘だから。確かにちっちゃい頃は好きだったけど…今は幼なじみとしてだから。別に…那智のこと、特別って思ってない。ただ…那智の動揺する顔が見たかっただけだよ」
「灯…」
「だから…そんなに真剣に考えなくていいんだよ?あたしのは…嘘だったんだから。あの子の想いは本物でも…あたしは偽りだったの。
だから…那智は凌花ちゃんを選んでいいんだよ?」
灯の言葉が偽りなのは…分かっていた。
話している灯が泣きそうだったから。
でも…俺は何も言えなかった。
灯は自ら身を引こうとしている。
きっと…凄く悩んだ上での決断だと思う。
そんな灯の決断を変えちゃいけない気がした。
だけど…灯が身を引こうとしていることに納得できない自分がいた。
どうして…嘘をついてまで、俺の背中を押すんだ?
泣きそうな顔をしてまで…そんな嘘をつかなくてもいいと思う。
「俺は…灯の言葉に甘えれない。灯をそうやって傷つけるために、俺は此処にいるわけじゃない」
俺がそういうと、灯ははぁーっと溜め息をつく。
凄く泣きそうな顔が俺の目に焼きつく。
「どうして…甘えてくれないのかなぁ?」
「強がっているのは分かる。俺はずっと、灯の傍にいたから。だけど…そんな傍にいて支えてくれた灯を…そんな形で傷つけたくないんだ」
「……強情、意地っ張り」
「…それが俺だよ」
強情で意地っ張り。
それ言われてもいい。
俺の気持ちを灯に聞いてほしい。
灯から自分の想いを押し込めてほしくない。
「灯…俺は…灯のことが好きだった、小さい頃だけど。俺は灯に弱さを見せてほしかったし、一緒に頑張って乗り越えたいと思ってた。だけど…俺の想いとは反対に灯はそうしよ
うとしなかったよな」
「……好きだから弱さを見せたくない。そう想ってたから…我慢してたの。でも…弱さを見せて良かったんだね。あたしは…格好悪いと思ってたから…」
「そんなことない」

