「確かにいつでも来ていいって言ったけど…気持ち変わるの早すぎ」



と、俺の姿を見た瞬間、灯は眉をひそめる。
俺は「わりぃ」と謝る。
すると、灯ははぁーっと溜め息をつき、肩を竦めた。



「まぁ、いいよ。今日も4人分夕食作っといたし」



灯は扉を勢いよく開け、家の中に戻って行った。
灯の優しさに思わず笑みがこぼれた。



「お邪魔します」



灯の家に入ると、灯の母親が笑顔で出迎えてくれた。
ほとんど毎日お世話になっているのに、嫌な顔一つしない。
「このままここに住めばいいのに」と笑顔で冗談で言うくらいだ。



夕食を食べ終わった後、俺は灯と灯の部屋に向かった。
灯の部屋は幼いころから全く変わっていない。
毎日来ているのに、凄く懐かしい感じがする。



「で、何が遭ったの?」



「ん?何でそう思うんだ?」



「那智が家に来る時は何か遭った時が多いからね」



もしそうだとしたら、俺は毎日何か遭ったということになる。
さすがにそれはないだろうと苦笑する。
苦笑する俺を気にする様子もなく、灯は話し続ける。



「で、あたしの部屋に入る時は自分で解決できない時が多いかな」



と、灯は意味ありげに微笑む。
俺ははぁーっと溜め息をついた。



「灯は…好きでもない男とキスできる?」



俺がぼそっとそう聞くと、何故か灯は固まる。
しばらく灯を見てると、急に灯の顔が真っ赤になっていた。



「な、何言ってんの!?」



声も裏返っている。
動揺しているみたいで少し面白い。
思わず笑ってしまう。



「いいから答えて」



灯はぽそぽそと答える。



「で…できないよ?そういうのは…好きな人とするもの…じゃん?」



か細すぎる声に俺は肩を竦める。
何を照れているんだと首を傾げる。



だけど…やっぱりそうだよな。