教室に戻っても、灯と目が合わない。
灯はまるで他人のように目を合わそうとしなかった。
そんな俺たちを不安そうに見つめる雄大
俺は雄大にも打ち明けることができなかった。



それからずっと…気まずいままだった。
灯が言った『バイバイ』はこういう意味だった。



なんとなく、気付いていた。
予想はしていたのに…こんなにも悲しい。
こんなにも辛い。
幼なじみという関係がこんなにも居心地良かったなんて…



「で、何があったの?」



と、優美は眉をひそめる。
『あたしと帰る約束は?』と、睨まれ、引きとめられてしまい、今に至る。



「なにって…何も…」



「とぼけても無駄。あたしには分かるの」



ふふっと面白そうに笑う優美に、俺は溜め息をつく。
灯のことを話していいか分からなかった。
そんな俺を見て、優美はキッと睨む。



「あたしには言えないこと?どうせ、灯ちゃんと何か遭ったんでしょ?二人とも、よそよそしいし」



「よそよそしいって…俺は別に…」



少なくとも俺はそんなつもりはない。
俺がそういうと、優美は『よそよそしい!』ともう一度言った。



「だっていつも二人って仲いいでしょ?幼なじみとは思えないくらい。だから、明らかにおかしいってことはクラスの皆、気付いてるよ?あたしもすぐ気付いたもの」



「もう…皆気付いてるのか?」



「当たり前でしょ?どう見ても、灯ちゃん貴方のこと好きって分かるもの。もう皆気付いてるわ、灯ちゃんの気持ちにもね。だから、いつもと違えば何か遭ったんだって分かるのよ」



と、優美はふふっと笑う。
俺はどうすればいいか、分からなかった。
ただぼーっとしている俺の腕を優美は掴む。



「…え?」



「じゃ、行きましょ」



優美は笑顔で俺を見る。
俺は優美は引っ張られる感じで、教室を出た。