「人を…信じてない?」



俺は首を傾げた。
雄大は宙から俺に目線を移す。



「信じてれば壁なんて作らねぇよ 。実際、灯がそうだろ?壁を作ってないから、周りに人が集まる。でも…壁を作っている人には近寄りたくないじゃん?」



凌花は…自分から壁を作っている?
壁を作っていなければ、今よりも笑顔で入れたんじゃないか?



俺はふとそんなことを考えていた。



凌花の過去を俺は知らない。
凌花の過去に壁を作る理由があるとしたら…
俺は聞かなきゃいけないんじゃないか?



「俺…凌花に会ってくる」



「それはダメ」



椅子から立ち上がった俺の腕を彼女は掴んだ。
俺はそんな彼女の顔を見る。



「…灯?」



「凌花ちゃんのとこ行くなんてダメ」



笑みを浮かべる灯が凄く不思議に感じた。


「なんで…」



「…なんで?次、移動教室だよ?サボらないって決めたでしょ?」


灯が首を傾げる。
当たり前でしょ?というような灯に俺は違和感を感じた。



「そうだけどさ…」



「移動教室だから早く行こ?」



「那智、諦めろ。授業は受けなきゃいけねぇんだから。東雲ならいつでも会えるだろ?」



結局、二人に押されて俺は二人と一緒に別の教室に移動した。
だけど俺の心の奥では、凌花のことを考えていた。