でもそれはただの気のせい。
皆、俺のことを心配してくれていた。
そして、誰よりも灯は俺のことを心配してくれた。
何度も相談に乗ってくれたし、背中を押してくれた。
灯に頼ってばかりじゃいられないと思った。
自分の力で進まなければいけないと思った。
それは凌花も同じだと思う。
凌花は…俺以上に人に寄りつこうとしていない。
それは凌花の過去のせいだと思う。
俺の似たような悲しみの色。
凌花が話してくれるまでは待とう。
だけど…俺は凌花の背中を押さなければいけない気がした。
「なぁ…雄大から見て、凌花ってどんな子だ?」
俺は雄大にふとそんなことを聞いた。
雄大はうーんと、頬を掻く。
「話したことねぇからわかんねぇけど…自分から壁を作っている子だと思うよ」
「自分から壁を作っている?」
予想外の言葉に俺は驚いた。
雄大から見て、凌花はそう見えるのか?
「俺はそう見えないけど…」
「だってさ、喋ろうとしないなんてそうしか見えないじゃん!壁を作ってなきゃ、あの子は普通に暮らす女の子だと思うけど?」
雄大の言葉で俺ははっとする。
確かにそうだ。
彼女は自ら話しかけようともしていない。
でも…俺には話しかけてくれた。
俺には壁を作っていない。
壁を作っているのは周りの人に対してだ。
自分のことを話そうとは思わないのか?
一人で寂しくないのか?
そう考えると、凌花が分からなくなってきた。
凌花から話してくれるまで待とうと思った。
だけど…俺は待てないみたいだ。
少しでも、彼女に触れたい。
そして、背中を押してあげたい。
彼女は一人ではない。
彼女が周りと仲良くしたいと思えば、仲良くできるはずだ。
彼女がそうしないだけで、本当は俺じゃなくても仲良くできたんじゃないか?
「なぁ…人が壁を作るのって何でだろうな?」
俺がふと尋ねると、雄大はうーんと宙を仰ぐ。
「…人を信じていないんじゃねぇ?」

