今だって…
いつも俺の傍にくるのに、友達と話している。
学校についてから、全然話しかけてこなかった。



喧嘩してから変わった気がする。
それが少し、心細い気がしていた。



「灯…教室に入ってから全然話しかけてこねぇから…」



「…あぁ、確かにそうだな」



雄大は気がついたように頷く。
そして、ちらりと灯のほうを見た。



「灯も素直になるってことかな」



「…え?」



「いや…こっちの話」



雄大はそう言って、その話を一方的に終えた。
俺は気になりながらも、なにも聞けなかった。



雄大は意味ありげに笑っている。
そして、急に話題を変えた。



「それはそうと、彼女とはどうなんだ?」



「唐突だな」



俺は苦笑した。
雄大がそんなことを聞くなんて意外だった。



「別に普通だけど?」



「ふーん」



雄大が聞いてきたのに、何故か興味なさそうにしている。
可笑しすぎる雄大に俺は思わず尋ねた。



「…急にどうしたんだ?」



「いや…最近、那智楽しそうだからさ…彼女の影響かなって」



…凌花の影響?
それもあるかもしれない。
だけど、一番は…灯だと思う。



ずっと信じてくれた。
俺の傍にいてくれた。



喧嘩をしても、俺の傍にいてくれると言ってくれた。
俺も、そんな灯の気持ちを少し受け入れた。



灯が気付いてほしいと言った気持ち
俺にはこたえることができないだろう。



何もかも中途半端な俺じゃ…。
凌花のことも本気なのか分からない。
ただ、居心地の良さに甘えているだけなのかもしれない。



分かっているのは、俺の中に凌花がいるということ。
灯と同じくらい…いや…それ以上に大きい存在かもしれない。



楽しいと感じる。
周りに大勢の人がいるのが苦手だった。
同情されているような気がして…。