図書室の秘め事*50㌢の距離*




おずおずと灯の手を握る。
灯は少し嬉しそうだった。



「那智の彼女って聞いて、話してみたかったんだよ~」



「あ…はぃ…」



「ふふっ。那智をよろしくね」



恥ずかしそうに頷く凌花
そんな凌花を嬉しそうに見つめる灯
そんな二人を見て、俺は嬉しくなった。



「じゃ、行こうか」



俺がそう促すと、灯が凌花の耳元でなにかを呟く。
俺は首を傾げて二人の様子を見ていたが、凌花の表情が一瞬で変わったように感じた。



灯は相変わらず表情を変えずに微笑んでいる。
凌花だけだ。
厳しい顔をしているのは。



「那智、行こ?」



「あ、あぁ…」



そんな凌花に違和感を覚えながらも、俺は灯に促されて歩き出した。
凌花も俺たちから離れて学校に向かう。
この距離に不思議と胸がざわついた。



それは教室に入った時もだった。
灯は凌花に何を言ったのか、教えてくれない。
ただ意味ありげに微笑んで、



「内緒」



と、悪戯に言うだけ。



気になっても、灯にこれ以上聞けなかった。
だからと言って、凌花には聞けなかった。
聞いても何も話してくれない気がした。



「那智、灯と仲直りしたんだな」



そんなことを考えてると、なにも知らない雄大が話しかけてきた。
俺は曖昧に「あぁ」と呟いた。
雄大は不思議そうに首を傾げる。



「どうしたんだ?」



「なぁ…灯って変わった気がしないか?」



俺はふとそんなことを尋ねた。
すると雄大は眉をひそめた。



「変わった?いや…そう思わねぇけど」



「だったらいいけど…」



変わった気がするのは俺だけだろうか?
仲直りしてから少し変わった気がした。



俺の背中をぽんっと押す。
だけどその時、無理をしているような悲しい顔をしている。
俺が気がつかなかっただけかもしれないが…。