図書室の秘め事*50㌢の距離*




灯と一緒に登校していると、俺たちよりも何歩か先に凌花がいた。
俺は凌花の名を呼ぼうとして、躊躇う。
躊躇っていると、隣で歩いていた灯が俺の顔を覗き込む。



「那智、東雲さんに声かけないの?」



「……声掛けづらいんだ」



「何、言ってるの?」



と、灯はくすくす笑う。
そして、俺の背中をぽんっと押した。



「行ってきなよ。あたしに遠慮しないで…さ」



「…灯?」



「あたしは大丈夫だからさ」



灯の笑顔は無理をしているように見えた。
俺はぎゅっと灯の手を握る。



「…大丈夫じゃないだろ」



「ちょっ、那智?」



そして、灯の腕をぐいぐい引っ張った。
凌花の前に立ち、ニッと微笑む。



「凌花、おはよう」



「…おはよぅ。先輩…隣にいる人は?」



凌花は灯を見て、戸惑っている。
俺はあぁと頷き、灯の肩を抱く。



「俺の幼なじみの灯」



「先輩の…幼なじみ…?」



灯は俺の手を払う。
そして、にっこりと凌花に微笑みかけた。



「初めまして…だよね?那智の幼なじみの斉藤 灯です」



凌花に手を差し出す灯
その手を見た凌花は戸惑った表情を見せる。



「東雲 凌花…です」