灯と一緒に登校していると、俺たちよりも何歩か先に凌花がいた。
俺は凌花の名を呼ぼうとして、躊躇う。
躊躇っていると、隣で歩いていた灯が俺の顔を覗き込む。
「那智、東雲さんに声かけないの?」
「……声掛けづらいんだ」
「何、言ってるの?」
と、灯はくすくす笑う。
そして、俺の背中をぽんっと押した。
「行ってきなよ。あたしに遠慮しないで…さ」
「…灯?」
「あたしは大丈夫だからさ」
灯の笑顔は無理をしているように見えた。
俺はぎゅっと灯の手を握る。
「…大丈夫じゃないだろ」
「ちょっ、那智?」
そして、灯の腕をぐいぐい引っ張った。
凌花の前に立ち、ニッと微笑む。
「凌花、おはよう」
「…おはよぅ。先輩…隣にいる人は?」
凌花は灯を見て、戸惑っている。
俺はあぁと頷き、灯の肩を抱く。
「俺の幼なじみの灯」
「先輩の…幼なじみ…?」
灯は俺の手を払う。
そして、にっこりと凌花に微笑みかけた。
「初めまして…だよね?那智の幼なじみの斉藤 灯です」
凌花に手を差し出す灯
その手を見た凌花は戸惑った表情を見せる。
「東雲 凌花…です」

