その次の日、俺はふわぁと大きな欠伸をしながら家を出た。
すると、クスッと聞き覚えのある笑い声が耳に届く。



「…灯」



「相変わらず眠たそうだね。寝ぐせついているよ」



そういって灯は俺の髪を手で直す。
喧嘩していたのが嘘のように当たり前に振る舞う灯
そんな灯にほっとしている自分がいた。



「…わりぃ」



「いーえ。そうえば、東雲さんと仲直りした?」



「…あぁ。ちゃんと謝った」



俺がそういうと、灯はふっと微笑む。



「良かったね」



「…灯のお陰だよ」



灯が背中を押してくれなかったら無理だった。
俺には勇気がなかったから。



凌花も俺のことを分かっていてくれた。
灯と同じように…。
それが嬉しかった。



俺のことをちゃんと理解してくれる人たちがいる。
俺を支えてくれる人がいる。
ちょっと前では考えられないことだった。



「少しずつ…進んでいる感じがするよ」



今、母親に会っても俺は笑っていられる気がする。
最後に会った日よりも大人で入れると思う。
そういられるのは灯や凌花のお陰だと思う。