俺は急いで学校に戻った。
もう、日が落ち始めている。



もしかしたらもう、彼女は図書室にいないかもしれない。
だけど、俺は彼女に今すぐ謝りたかった。



傷つけてしまった。
傷を負っていることを知っていたのに。
きっと泣いている。



俺は図書室の扉を勢いよく開いた。
はぁはぁと息を切らしながら、見つめた先に彼女はいた。



夕日に照らされ、浮かぶ影
その影は泣いているようにも見えた。



彼女は扉に背を向けている。
俺はゆっくりと彼女に近づく。



「どうして…戻ってきたんですか?」



涙ぐむ彼女の声
俺はぴたりと足をとめた。



「…ごめん、一人にして…」



「あたしよりも大切な人のところへ行ったのでしょう?だったら…戻ってこなくても…」



「…傷つけた。だから…戻ってきたんだ」



「…謝っても許してあげません」



いつもと違う、凌花の冷たい声
俺は思わず下を俯いた。



足音がどんどん俺のほうに近づいてくる。
足音がぴたりと止まり、顔を上げた。



すると、そこには笑みを浮かべる凌花の姿があった。



「…だけど、ありがと。戻ってきてくれて」



「…怒ってないのか?」



「…怒る理由なんてありますか?事情はどうであれ、先輩は戻ってきてくれた。それだけでいいんです」