「……輩…先輩っ!」
放課後の図書室、俺は凌花の声で我に返る。
ぱっと凌花のほうを見ると、凌花は眉をひそめていた。
「先輩…どうしたんですか?最近、可笑しいです」
「……悪い」
2週間前からずっと灯のことを考えている。
喧嘩してから…どうすればいいのか分からない。
「先輩…何か遭ったんですか?」
「俺って…そんなに分かりやすいのか?」
今日何回目だろう。
皆に心配させてばかりだ。
「…先輩だから分かるんです」
そう言って微笑む凌花
凌花はいつも、俺の心を見透かす。
きっと…俺が落ち込んでいる理由も。
「あたしが…先輩の傍にいます。だから…一人で苦しまないでください」
凌花の言葉はあの日、灯が俺に言ってくれた言葉とよく似ていた。
『あたしはずっと那智の傍にいるから。那智が辛い時や悲しい時は傍にいるよ?』
灯は…どういう気持ちで俺に伝えてくれたんだろう。
後ろから抱きしめようとした凌花の手を俺は払った。
凌花は傷ついた悲しそうな表情を見せる。
「せん…ぱぃ…」
「…ごめん、凌花」
俺は椅子から立ち上がる。
凌花は俺の制服の裾を掴む。
「先輩…帰るんですか?」
「…ごめん。俺…謝ってくる」
そう言って俺は凌花をおいて、灯の家へと向かった。
凌花の横を通り過ぎた時、泣きそうな表情が見えた気がした。
だけど、俺は灯に謝ることで頭がいっぱいだった。