それは凌花と付き合い始めて、2週間が経とうとしていた頃だ。
俺は毎日のように授業を受け、それが当り前のように感じて来た時だった。
「なぁ…お前、灯と何か遭ったのか?」
雄大が不思議そうに俺に尋ねる。
俺はちらりと雄大の肩の隙間から灯を見た。
灯は一人で静かに本を読んでいる。
俺から見ても、灯はどこか可笑しかった。
きっと…あの日からだ。
俺が凌花とちゃんと付き合うと話した時から。
あの日から俺は灯と喧嘩し、仲直りしていない。
昔から喧嘩してもすぐに仲直りしていた。
ずっと一緒にいたから、こんな感じは初めてだった。
悪いのは…きっと俺だ。
でも…どうして灯が怒ってるのか、分からなかった。
「…喧嘩してだけだよ」
「珍しいな。灯と喧嘩なんて…」
「喧嘩ぐらいするよ」
幼なじみでも喧嘩くらいする。
だけど、こんなに長いのは久しぶりだ。
「何で喧嘩したんだ?もしかして…1年の東雲のことか?」
雄大にもばればれなのか。
俺は思わず苦笑した。
「もう…そんなに噂なのか」
「東雲は目立つからな…それにお前も。灯と仲直りしないのか?」
「…できねぇよ」
凌花とのことで喧嘩した。
だけど、どうして怒っているのか分からない。
謝りたくても謝れない。
「灯の怒ってる理由が分からねぇんだ。でもきっと…俺が悪いんだと思う」
灯はずっと傍にいると言ってくれた。
俺の力になると…なのに…喧嘩して怒らせた。
「…凌花と少し話してくるよ」
ぽんっと俺の肩を雄大は叩いた。
そして、俺の元を離れ、灯のほうへと行った。