「灯、機嫌悪いんだよ」
「…あら?喧嘩でもしたの?」
「いや…さっぱりわかんなくて…」
俺は頭を掻く。
灯がどうしてあんなに怒っていたのか、身に覚えがない。
そのことを話すと、おばさんはくすくすと笑った。
「あの子ったら…那智くん、気にしなくていいわよ」
「でも…」
「私が言っておくわ。那智くんは甘えていいのよ」
その優しさに思わず笑みが零れる。
俺の母親とは大違いだった。
いや…昔も母親はこんな感じだった。
「ありがとうございます」
「いいえ。那智くんは灯の大切な幼なじみだもの」
そう言っておばさんは夕食の支度を再開する。
俺は手伝うために袖をまくった。
「手伝います」
「あら…ありがと」
不思議と、今日はいつもと違う気がした。
俺の気持ちが変わってきたということなのかな?
まだよく分からずにいた…。