「……本気で付き合うんだ」



灯はぼそっと呟く。
俺は今日も、灯の部屋に来ていた。
俺の話を一通り聞いた灯は何故かいつもより暗い気がした。



「本気っていうか…信じてもいいかなって思ってさ」



凌花の想いが本物だ気付いたから。
俺も少し、凌花を信じようと思った。



「ただ…それだけだ」



「だったら…付き合わなくてもよかったんじゃ…」



と、灯はぼそっと言う。
不機嫌な感じがよく分かった。
いつもと違う灯を見て俺は首を傾げた。



「灯…どうしたんだ?」



「那智の鈍感っ!」



目の前から本が飛んでくる。
俺はその本をすれすれで避け、その本をキャッチする。



「灯、危ないだろ?」



「那智なんて大嫌いっ!早く帰って!」



と、灯に部屋を追い出された。
俺はきょとんと灯に部屋の扉を見つめる。



「…なんだ?」



「那智くん、夕飯食べてく?」



一階のキッチンから声が聞こえてくる。
俺は急いでキッチンに向かった。
キッチンでは灯のお母さんが夕食の支度をしていた。



「おばさん、今日はいいよ」



「食べてっていいのよ?那智くんは家の息子も同然なんだから」



と、優しく微笑んでくれるおばさん。
出来れば甘えたかったが、そうはいかないみたいだ。